こんにちは。税理士の太田圭子です。
今回はインボイスについて不動産オーナーが事前に検討すべきことに的を絞って解説いたします。
1.そもそもインボイスって何?
消費税の課税事業者だけが発行できる書類のことです。具体的には請求書や領収証、契約書などに消費税額や税率、そして課税事業者の証となる「登録番号」など一定の事項が記載されたものをインボイスといいます。
2.インボイス制度が導入されるとどうなる?
消費税は、売上にかかる消費税から仕入や経費にかかった消費税をマイナスして税額を計算します。2023年10月の制度開始後はインボイスがないと消費税をマイナスすることができません(経過措置は後述)。つまりマイナスできない消費税分だけ費用負担が大きくなってしまうのです。
3.免税事業者の不動産オーナーが直面しそうな問題
免税事業者であってもテナントや駐車場の賃料に消費税をかけること自体は違法ではなく、全く問題ありません。それはインボイス導入後も変わりません。問題はインボイスを発行できないということです。賃借人からこんなことを言われるかもしれません。「消費税を納めていないのなら、消費税はとらないでください。」「消費税分は値下げしてください。」さて、みなさんはどのように対応しますか?
4.免税オーナーの選択肢
(1)インボイスを発行できるようにする
つまり消費税の課税事業者になるということです。消費税の申告、納付が必要になります。今まで儲けの一部になっていた消費税を納めなくてはならなくなります。但し条件が合えば簡易課税制度を適用して消費税の一部を利益として残すことも可能です。また、簡易課税を選択しない場合は大規模修繕などで大きな費用が出たときには消費税が還付されることもあります。
(2)値下げに応じる
消費税の納税義務者にはなりたくないが、「インボイスが発行できないとテナントが退去しそう。」「駐車場が埋まらない」という事態になるのなら値下げも選択肢の一つです。どちらが得か?といった試算はしておいた方が良いでしょう。
(3)値下げにも応じないし、消費税の課税事業者にもならない
人気エリアのテナントや駐車場ならば、強気な姿勢もありでしょう。
それともう一点、インボイス制度には「経過措置」が設けられており、2023年10月以降も6年間はインボイスが無くとも、一定割合の仕入税額控除が認められます。導入後最初の3年間は80%控除可能、残りの3年間は50%控除可能です。
従って賃借人はインボイス無しでも、当面の間は消費税分について全額損をしてしまうわけではありません。
インボイスを発行できないことを理由に家賃にかかる消費税の全額について値下げを求めるのは正当性に欠けるといえるでしょう。
5.既に課税事業者である不動産オーナーが準備しておくべきこと
(1)登録申請
既に消費税の課税事業者である方は、早めに税務署へ登録申請をして「登録番号」を取得しましょう。
受付は今年の10月から既に開始しており、申請から二週間前後で「登録番号」が取得できます。
(2)賃貸契約書、領収書をインボイス仕様に変更
登録番号が取得できたら、次はインボイス発行の準備です。
賃借人からインボイスを求められることを想定し、消費税の対象であるテナントや駐車場などの賃貸契約書は登録番号などの必要事項を記載したインボイス仕様に変更する準備が必要です。コインパーキングの領収証も精算機の設定を変更するなどして、インボイスの要件を満たす必要がでてくるでしょう。
6.最後に
以上のように、インボイス制度は事前準備が肝心です。
そして消費税の判断は複雑ですので必ず税理士に相談しましょう。