皆様こんにちは、税理士の太田圭子です。
ここ最近、税金を申告しなかった芸能人のニュースが世間を騒がせています。
「ルーズだった」「知らなかった」では済まされない無申告。
延滞税・加算税などのペナルティを含む税金を納めなくてはならない上に、芸能人などの場合は番組出演やCM等の打ち切りにより多額の違約金を請求されることもあり、今まで蓄えた財産をすべて失ってしまう結果にもなりかねません。しかも事実上引退に追い込まれるなど社会的な制裁も大きいのです。
それでは、有名人でなければ大丈夫?
そんなことはありません。
無申告の代償は誰にとっても大きなリスクとなる可能性があります。
そこで今回は無申告のリスクについてざっくりと説明いたします。
1、申告していれば払わなくて済んだ罰金部分の税金が大きい!
無申告の所得などがばれてしまった場合、本来納めるべき税金に加え罰金を払わなくてはなりません。
加算割合は、15%~50%となっています。
なぜこんなに開きがあるのかというと、うっかりや、認識不足による無申告と所得隠しや無申告を繰り返した場合など、状況に応じて段階が設定されているためです。
但しこの判断は課税庁側が下しますので、いくら「隠すつもりはなかった、知らなかっただけ」と主張しても状況判断によっては認められない場合があるのが、厳しいところです。
これに加え延滞税も発生し、最長で7年間の納税が、まとめて一気にくるわけですので、ダメージは計り知れません。
2、期限内申告でないと使えない税務上の特例がある!
税金の世界では、期限内申告して初めて使える特例があります。この特例はウッカリ申告を忘れていた(悪意はなかった)、申告期限の翌日遅れて申告したといった場合でも基本的には救済されません。
代表的なものをいくつかあげておきます。
①最大で3,000万円が非課税になる住宅取得資金贈与の特例
②最大で2,500万円が非課税となる相続時精算課税制度の特例
③個人が使える最大65万円の青色申告特別控除
例えば上記①の住宅取得資金贈与ですが、子供に3,000万円贈与した後に、うっかり申告を忘れていた場合などには、通常の贈与税が課税されてしまいます。
贈与税は税率が高く、仮に3,000万円を贈与した場合の贈与税は1,035万円になります。期限内に申告していれば税金はゼロで済んでいたはずなのに、大変大きな税負担となってしまいます。
話は少しそれますが、上記①の特例は、消費税が10%となったことにより、非課税額が最大で3,000万円に拡大されたものです。
但し期間限定の特例であり、最大3,000万円が無税となるのは令和2年3月31日までとなります。
資産家にとっては、確実な相続対策となりますので検討されている方も多いかと思いますが、必ず期限内に申告してください。
また、適用要件も複雑となっておりますので、贈与実行前、住宅の購入検討段階で税理士に相談してください。
3、青色の取り消しを受けることもある。
個人事業者や法人の場合、無申告や二期にわたる期限後申告の場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。青色申告ができないと特別償却や税額控除など様々な税務上の特例が使えなくなります。一番大きな問題となるのが、欠損金(前の年の赤字)が繰り越せなくなることです。
その結果、より多くの税金を納めなくてはならなくなります。
以上、主なリスクを上げていきましたが、他にも無申告の状態で税務調査となった場合、心象も悪く、調査時の対応を有利に進めることが難しくなる、または無申告の結果、所得を証明するものが無くて融資が受けられないなど、無申告の代償はとても大きなものとなります。
書類が揃わない、帳簿が間に合わないといった場合は、とりあえず概算でも期限内に申告することをお勧めします。
後日正確な納税額を計算し、修正申告や更正の請求をすればよいのです。
そうすることにより、多くの場合、無申告や期限後申告によるリスクを避けることができます。