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相続人に行方不明の方がいる場合の相続手続きについて

2024.12.20

 親族のどなたかが亡くなり、その相続人が、不動産の名義変更や預貯金の解約などを行う場合には、その前提として、遺産の分け方を決定し、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成する必要があります。

 

 それでは、相続人の中に行方不明の方がいる場合は、どうすればよいのでしょうか?
方法としては次の2つがあります。

 

①不在者財産管理人の選任申立て
②失踪宣告の申立て

 

 どちらの手続きも行方不明となっている方の最後の住所または居所(住所ではないが、実際に住んでいた場所)を管轄する家庭裁判所で行うものとなります。

まず、①の不在者財産管理人の選任申立てについてご説明します。

 不在者財産管理人(以下、「管理人」といいます)とは、行方不明の方の財産などを管理する代理人であり、①はこの代理人を裁判所に選んでもらう手続きとなります。

 この手続きの申立てができるのは、利害関係人に限られます。

 では、利害関係人とは、具体的にどのような方が該当するのでしょうか。

 

 たとえば、ある家族の父が亡くなり、その相続人が、長男と、行方の分からない二男というケースについて考えます。

 この場合は、長男が、二男について、この申立てを行うことができます。

長男と二男は、父の相続に関して「共同相続人」という関係性にあり、長男は二男と話し合いをしなければ、相続手続きを進めることができないためです。

 そして、長男の申立てにより管理人が選ばれた場合、長男は、二男の管理人と話し合いを行い、遺産分割協議書の作成を行っていくこととなりますが、この際に注意点が1つあります。

 それは、二男の法定相続分です。

 管理人が遺産分割協議に参加するには、裁判所の許可が必要ですが、二男の法定相続分が守られないような遺産分割協議については、基本的に裁判所の許可が下りません。

 なぜなら、管理人は、二男の財産の管理や権利の保護を目的として裁判所に選ばれているためです。

 また、①の手続きを利用するうえでは、「予納金」についても考慮する必要があります。

管理人には、司法書士や弁護士が選任されるケースがほとんどですが、そのような専門家が管理人となった場合は、継続的に報酬が発生します。

このような将来発生する報酬や費用の支払いにあてるため、裁判所は金額を定めたうえで、申立人に対して、予納金の支払いを命じます。

 

 行方不明の方に預貯金などの財産が十分にあれば、予納金は0円となる可能性もありますが、特にこのような財産がない場合や、不動産等すぐに換金できない財産しかない場合は、予納金の支払いは必要となります。

 管理する財産の額等にもよりますが、この予納金は、およそ50万円から100万円で設定されます。

 なお、親族などが管理人として選ばれた場合は、管理人報酬を無償とすることで予納金の金額を抑えることもできますが、誰を管理人とするかの最終的な決定権は裁判所にありますので、たとえ、親族を管理人の候補者として申立てを行っても、親族以外の専門家が選ばれる可能性は十分にあり、その場合は、通常どおりの予納金の支払いが必要となります。

 

 次に、②の失踪宣告の申立てについてご説明します。

 失踪宣告とは、7年以上の間、行方不明の方を、法律上死亡したものとみなす手続きのことです(行方不明であっても、生存していることが明らかな場合は、この手続きはできません)。この手続きも、①の手続きと同様に利害関係人のみ行うことができます。

 ただし、①の手続きと比較すると利害関係人の範囲がかなり限定されます。

 

 先ほどの、父が亡くなり長男と二男(行方不明)が相続人となるケースで考えます。

まず、長男と二男が父の共同相続人であることを理由に、長男が、二男の失踪宣告の申立てをすることはできません。

理由は明確ではありませんが、失踪宣告は、①の手続きとは大きく異なり、行方不明の方を死亡したものとみなすという点で、より慎重に行うべき手続きであり、また、仮にこの手続きができない場合であっても、①の手続きを行うという選択肢が残されているためであると考えられます。

 

 なお、行方不明の方の推定相続人(行方不明の方が死亡した場合に相続人となる方)については、失踪宣告の申立てをすることができます。

 先ほどのケースで考えると、二男に妻や子どもがいた場合は、妻や子どもは推定相続人に該当するので、失踪宣告の申立てを行うことができます。

仮に、二男に妻や子どもがおらず、母や祖父母などが既に亡くなっている場合は、長男が二男の推定相続人となりますので、長男が申立てを行うことができます。

 そして、失踪宣告の審判がなされ、審判が確定すると、行方不明の方は、行方不明となってから7年の期間満了時に、死亡したものとみなされますので、長男は、二男の妻と子どもと遺産分割協議を行い、父の相続手続きを進めていくこととなります。

 

 また、失踪宣告の手続きは、申立てから審判確定まで、かなりの時間がかかってしまう点も考慮しなければなりません。

詳細については割愛しますが、申立て後は、官報公告や裁判所による調査が行われますので、ほとんどのケースで半年以上の時間がかかることになります。

 

 長文となりましたが、①と②の違いを簡単にまとめると次のとおりとなります。

(1)申立人の範囲は、①は広めで、②は限定されている。(直接的な利害関係が必要。)
(2)申立ての際の予納金は、①は必要で、②は不要。
(3)要件となる行方不明の期間は、①は無く、②は7年。
(4)手続き完了までに必要となる期間は、①は数ヶ月程度、②は半年~1年程度。

両者の手続きは非常に複雑で、それぞれに注意すべき点が多くあります。

 

 このようなケースでは時間も費用もかかりますが、相続の手続きは、放置すると、次の世代に負担をかけてしまうことになりかねませんので、まずはその第一歩として、司法書士や弁護士などの相続の専門家に、ぜひご相談ください。

 

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筆者紹介

長谷 賢太郎
司法書士法人みつ葉グループ

福岡県司法書士会 登録番号1966

親しみやすく、より身近な専門家であることを常に心がけています。
相談すべきかどうか判断に迷ったときでも、まずはご相談いただければと思います。

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